【序章】 お嬢様と烏

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その日はやけに空が澄んでいた。その空模様と私の心は正反対で、思わず深いため息をつく。 あぁ、もう、何故。 昨日まではどしゃ降りの雨だったというのに。天気ほど不思議なものはないな、と心の片隅で思った。 「アリアお嬢様、もうすぐ別荘に着きます。ご用意なさるように」 「もうしているわ」 私はアリア。自分で言うのもあれだけど、かなりの金持ちよ。父は大手企業の社長。母は投資家。お金に関しては全く苦労していない。 けれどひとつだけ問題があった。 親が過保護すぎる。 私はこの15年間、学校以外で外出することはまずなかったし、こうやって別荘に行くことも初めて。 別荘があったことも知らなかった。私だけが仲間はずれにされた気分。あぁ、全く腹立たしい。 気が付くと、随分森の奥まで来てしまったようだ。車が揺れる。コンクリートではこの揺れかたはしないだろうに。 「まだなの?もうすぐって言ったのは誰?」 「申し訳ありません。おかしいですね……運転手、まだですか?」 「……多分もう少しです」 多分とは何なの?と文句を言いたいところだけど、私は拳を握りしめることで我慢した。ストレスを発散させるのもいいのでしょうが、意味のないことだというのは嫌と言うほど分かっているから。 その時だ。 ガタンガタン!という音と共に車が激しく揺れた。瞬間、胃が浮くような気持ち悪い感覚がした。 「っ…!」
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