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ザァァァァァ……
雨が、降った。
「……また、泣いているのかい?」
世界は素直なもので、今の言葉を否定するかのように、一瞬だけ雨が止む。あぁ、悲しい訳ではないのか。
「じゃあ、なんで泣いているんだい?」
問いかければ、また雨は降りだした。世界が言葉を喋ることを拒むかのように。
ふと、心が軽くなった自分がいた。黒の翼を動かせば、世界の涙はパラパラと落ちてゆく。その度に、暖かな気持ちになる。
「……あぁ、そうか」
あんたは優しい奴だったね。僕のこと、いつだって思ってくれている。この涙は、僕の代わりに流したものなんだね。余計なことしてくれちゃうなぁ。
「消えても、あんたは変わらないんだね」
けれど、あんたが泣いたということは世界の歯車が狂い始めたということ。止まった世界が、再び動きだすということ。
早く手を打たないと、取り返しのつかないことになる。
「……もう、大丈夫だから、泣かないでよ」
すると雨はピタリと止む。雲の切れ目から、太陽が覗いている。
「虹が出るかもしれないね。あんたが好きだった、この世界の虹が…」
もう二度と、拝めないと思ってたよ。
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