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漆黒の美しい翼を持ち、黒真珠のような瞳を持つ烏(カラス)だ。このような美しい烏もそうそうお目にかかれないだろう。
ちなみに、この烏は何故か喋れる。初めは気味が悪く斬ろうかと思ったが、案外気立てのよい烏で、何かと役に立っている。
「烏、お前も食べるか?」
「あ、欲しいかも。……ってミカゼ!僕の名前は六斗(リクト)って言ってるじゃないか」
「あぁ、そうだったな。スマン忘れていた」
「……一週間も一緒にいるんだから、忘れないで欲しいや」
リクトは機嫌を損ねたようで目線を合わせない。全く、繊細な烏だ。
俺が木の実を砕いた物を機嫌取りにやろうかと思った時、リクトは「そういえば…」と呟いた。
「どうした?」
リクトの機嫌は既に直っているらしい。なんだか雰囲気が重く感じた。俺は木の実を横に置き、リクトを見つめた。
「あのさ、ミカゼ。大変なことが起きたんだ」
「……なにが起きた?」
「この森が燃えて無くなるより大変なことが起きたんだよ」
「………まどろっこしい!さっさと言えば良いだろう!」
ガサガサ。
――――気配?
俺は森方面の茂みを凝視した。さっきまでは確実にいなかった何かがそこにいる。
「あ、来たよ」
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