【第一章】 サムライとお嬢様

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あ、来たよ。で済ませる問題ではなかった。 緊張と殺気に当てられ、手に汗が滲む。目の前にいるのは、体長4メートルにもなる化物。 体はまるで熊のようだ。無造作に生えた体毛。手や足には鋭い爪。狼にも似た顔に、涎で汚れた口には鉄すらも噛み砕けそうな牙が生えている。 どうやら相手も昼食の時間のようで、獲物である肉を探していたようだ。もちろん、今狙われているのは俺。 あんな巨体の化物に対し、こちらは体長(四捨五入して)約2メートルの俺と、しがない烏一羽だ。 「これって絶体絶命って言うんだよね?」 「……あぁ」 俺は腰に携えていた刀を持ち、鞘から抜いた。一応俺も武士…――サムライだ。ここで負けては、仕えていた主人に申し訳がつかない。 俺は意を決して構える。 化物は大地を揺るがさん程の雄叫びをあげ、俺に向かって来た。大きく振り上げられた腕をかわし、化物の横腹に狙いを定める。 「はぁぁッ!」 勢い良く、とまではいかないが(なんて厚い肉なのだろう)、強く裂いたお陰で化物はのたうちまわっている。 返り血が気持ち悪い。 化物は這うように逃げて行った。
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