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あ、来たよ。で済ませる問題ではなかった。
緊張と殺気に当てられ、手に汗が滲む。目の前にいるのは、体長4メートルにもなる化物。
体はまるで熊のようだ。無造作に生えた体毛。手や足には鋭い爪。狼にも似た顔に、涎で汚れた口には鉄すらも噛み砕けそうな牙が生えている。
どうやら相手も昼食の時間のようで、獲物である肉を探していたようだ。もちろん、今狙われているのは俺。
あんな巨体の化物に対し、こちらは体長(四捨五入して)約2メートルの俺と、しがない烏一羽だ。
「これって絶体絶命って言うんだよね?」
「……あぁ」
俺は腰に携えていた刀を持ち、鞘から抜いた。一応俺も武士…――サムライだ。ここで負けては、仕えていた主人に申し訳がつかない。
俺は意を決して構える。
化物は大地を揺るがさん程の雄叫びをあげ、俺に向かって来た。大きく振り上げられた腕をかわし、化物の横腹に狙いを定める。
「はぁぁッ!」
勢い良く、とまではいかないが(なんて厚い肉なのだろう)、強く裂いたお陰で化物はのたうちまわっている。
返り血が気持ち悪い。
化物は這うように逃げて行った。
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