【第一章】 サムライとお嬢様

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「あ…」 「なんだ?まだ何かあるのか?」 リクトの呟きにため息をもらすと、いきなり黒の鳥は羽ばたいた。 「な…ッ」 「大変だ!さっきの化物、あの子に向かってる!」 「あの子…?」 いつも冷静なリクトが乱れている。リクトとは逆に冷静になっていく思考を更に落ち着かせ、俺はリクトに尋ねた。 「あの子って、誰だ?」 「いいから早く追いかけて!あの子が死ぬ!」 「……チッ」 せっかく九死に一生を得たというのに、自ら化物を追わねばならぬなんて。馬鹿馬鹿しい。けれど、その“あの子”に興味を持つ自分もいた。 腰にまで到達している草を掻き分けながら化物を追う。道案内にリクトが先に進みつつ「早く」とせかす。 やっと草がなくなり、開けた場所に来た時だった。 「キャァァァァアア!!」 「ッ!?」 女……?まだ少女か。何故人間がこんな所にいる?いや、今はそんなことを気にしている場合ではない。 少女は大樹の影に隠れ、化物を見ている。どうやら足が怯んで動かないようだ。となれば、この化物の息の根を止めるしかないか。殺生は好まぬ質(たち)だというのに。 バサバサバサッ! 「リクト!?」 リクトが化物に向かって行った。そのままリクトは化物の目をクチバシでつつき、目を潰そうとした。 一際大きな叫び声をあげた化物は、目をおさえながらその場に崩れ落ちる。俺はその隙を狙い、生物の急所である喉を裂いた。 すると、硝子が割れるような音が辺りに響き、化物は忽然と姿を消した。 「……死んだ、のか?」 こんな死に方をする生き物は始めてみた。
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