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案外、弟君が引き合わせてくれたのかも。
そう言うと、千春はキャットフードにがっつくささみの頭を撫でた。
ささみは構わずがっついている。
本当にそうだとしたら、それは運命だ。とても綺麗で、ロマンのある、まるで夢のような運命。
微塵も恥ずかしがらず、そんな事を言える彼女が少しうらやましく思えた。
壁に木でも貼るといいよとアドバイスを残して、千春は帰って行った。
確かにそれで猫の爪とぎ被害はなんとかなるだろうが、それはそれで大変そうで気が進まない。
ベッドの上で丸くなりながら、ささみがこちらを見ている。
弟君が引き合わせてくれたのかも。
ふとその言葉を思い出し、剛、と口にしていた。
ナァ。
名前に反応したのか……
ささみ。
ナァ。
食いしん坊。
ナァ。
何だ、ただ声に反応しただけか。
ささみはしばらくして寝入ってしまった。
ベッドの中央に居座っている為、二度寝する事もできない。
仕方ないか。
パソコンを立ち上げる。
これでも作家のはしくれだ。書かなければ食べていけない。
お前のご飯もだぞと視線を投げるが、ささみは我関せずと寝入ったままだ。
こんな時でも仕事をしないといけないだなんて。
少しくらい、ゆっくりさせて欲しいものだ。
ザザァ……
また外の雨が激しくなってきたのか。
膝の上に置いた手に、ポツリと何かが落ちて来た。
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