満月の見える部屋

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ゲホッ、ゴホッ…ゴホ… 彼女の母親は時たま、本当に苦しそうな咳をする。 彼女の話では、母親は肺を患っているとのことだ。 治る病気であると、彼女は微笑んで言った。 恐らくは、医者にそう言われたのだろう。 医者は、確率は1%であっても、それを治る病気と云う。 いや、例え不治の病であったとしても、治る〝見込みはある〟と言うだろう。 それは患者を安心させる為だろうが、当の本人はそれをよく分かっている。 そして、分かっていて尚その言葉に安心したような素振りを見せる。 それが、本当に安心しているのか、それとも、優しい言葉を投げかけてくれた医者に対する〝当然の考慮〟なのかは分からない。 どちらにせよ間抜けな事だ。 自分では駄目と分かっていても、他人から希望を投げかけられれば、それを信じてみたくなる。 例え自分がもう長くないと知りつつも、他者の事を気にかける。 どちらの考えも、僕には理解出来ない。 僕はその日、彼女とその病気の母について考え眠りについた。
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