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次の日は、酷く蒸し暑い1日だった。
僕は、朝食をご馳走になり、一礼をしてその家を後にした。
アパートの件について、彼女と共に不動産屋へ向かう為だ。
「昨晩はよく眠れましたか?」
彼女はにっこりと微笑んでそう言った。
「お陰様で、昨日はよく眠れたよ。」
綺麗に並べられた石塀を、指でなぞりながら僕はそう言った。
「でもあのお布団、しばらく使っていなかったから誇りっぽくありませんでした?」
彼女は、心配そうに僕の顔を覗き込む。
泊めてもらっておいて、いちいち布団がどうとか文句を言うほど僕は図々しくはない。
僕は、撰び抜かれたそれに見合った台詞で言を返す。
彼女は、そんな僕の〝つまらない言葉〟も熱心に聞き、嬉しそうに反応したりする。
まるで、久しぶりにまともな会話をした。そんな感じだった。
しばらくすると、彼女の知り合いの不動産屋が見えてきた。
手続きだの何だのは、全て彼女に任せてしまった。
彼女は、その事に文句一つ言わずに、せっせとやってくれた。
手続きが終わり、僕らは大家に連れられてそのアパートへと向かった。
リバトゥーンレボリィ
街の隅にある小さなアパートの名だ。
僕は、その小さなアパートが、どことなく涼しげで気に入った。
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