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不意に目が覚めた。
しかし目は開いていない、意識はあるのだが目は開いていない。
そういうことはよくあるものだ。
そうして目を閉じたまましばらく横になっていると。
「大丈夫ですか?」
人の声が聞こえた。
「そんな所で寝ていると風邪ひいちゃいますよ?」
片目だけだけ開けて見ると、そこには長めのブロンドの髪の女の子がこちらを覗き込んでいた。
「絵描きさんなんですか?画材散らかってますよ、片付けるの手伝いましょうか?」
「ん、あぁいいよ、自分で出来るから。」
そう言って立ち上がり、適当に鞄に詰め込んでいると。
「でも、やっぱり手伝います、1人より2人の方が早いですしね?」
「…いいって言ったのに。」
そうは言ったものの、黙々と画材を鞄に詰めていった。
「ん、ありがとう。」
「いいんですよ、私、絵描きさんなんて初めて見ましたよ、どんな絵を描くんですか?」
「あぁ、絵はこれから描く予定…。」
「これから?まだ絵を描いたこと無いんですか?面白い方ですね。」
「うん、でも一枚も描いたこと無い訳じゃ無いよ。」
「わかってますよ!本当に面白い方ですね、そういえば、どこから来たんですか?」
「あぁ…んー、ちょっと遠い所かな。」
「そうなんですか?じゃあこの辺りは初めてなんですか?」
「うん、この辺は初めてなんだ。」
「そうですか…、今日はどこか泊まる所はあるんですか?私、あっちに見える街に住んでるんですよ、もし無いようでしたら、知り合いの経営しているアパートがあるんで、寄ってみて下さい、部屋も開けて貰えると思いますし。」
そう言うと少女はにっこりと笑い。
「私、これから母に薬草を届けに行きますね、それでは失礼します。」
そうして彼女は少し小走りで街に向かって行った。
「…街か、行ってみるかな。」
そう言って彼は鞄を持ち、とぼとぼ街に向かって歩いて行った。
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