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「お買い物に付き合って頂き、ありがとうございますね。それと、今日はもう暗いですし、アパートは明日にして、今夜はうちに泊まっていって下さいよ、母もきっと喜びます。」
僕の一歩前を後ろ向きに歩きながら、彼女はそう言った。
「そういえば…」
「名前、まだ聞いてませんでしたね?」
言われてみればそうだった、僕はここまでしてくれた彼女に、まだ自己紹介すらしていなかったのだ。
「ごめん、ごめん、少し遅れての自己紹介だけど、僕はシャムロック。シャムと呼んでくれて構わないよ。」
少し無愛想に、素っ気なくそう言った。
「シャムロック…素敵な名前ですね。じゃあ次は私が自己紹介する番ですね、私はシセリア。皆は私の事をリンと呼ぶわ、よろしくねシャム。」
彼女は一度立ち止まり、にっこりと笑いそう言った。
「…あぁ、よろしく。今晩はお世話になります。」
軽く頭を下げ、僕はそう言った。
恐らく、彼女の目にはそれも素っ気なく見えた事だろう。
しかし彼女は、そんな態度を見せもせず。
「どういたしまして、困った時はお互い様ですよ。」
と、言ってやっぱりニコニコとしていた。
「ここが私の家ですよ、小さいからって笑わないで下さいよ?」
泊めてもらうのに文句は言えない。
僕は無言のまま、彼女に付いて細い階段を昇っていった。
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