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……足が動かない。
私の目の前には階段がある。校舎の窓から差し込む夕日によって照らされたその階段は静寂の中に私を飲み込んでしまいそうだった。
「ねぇ……」
この声が私は嫌いだ。暗闇から私を見てあざ笑うような声。
私はなんとか振り向く。
縄跳びくらい太い紐が揺れた。
「早く……」
菜津子は無表情なまま言った。手すりに縛り付けられ喉にのびる紐を握る。
「早く……」
菜津子は笑う。私を嘲笑うように。私を飲み込むように。
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