階段

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涙がとまる。 「なによ?」 表情の変わった私を見て菜津子が笑いをとめる。 「菜津子……ごめんね」 口からふとそんな言葉が漏れた。 「……よくそんな軽々しく言え……」 「ゴメンネ ゴメンネ ゴメンネ ゴメンネ ゴメンネ ゴメンネ」 私の口からはそれしかでなかった。 「やめなさい!」 菜津子が叫んだ。それでも私の口はとまらない。 ゴメンネ ゴメンネ ゴメンネ…… 「やめなさいよ!!」 菜津子の声が無人の校舎に木霊する。 私の口がとまる。 ただ夕日と菜津子を眺める。眩しい。 「……あんたにね!謝ってほしいわけじゃないのよ!!あなたなんか許さないわ!」 「……うん」 もう終わり。そんな気がした。階段は残り十二段。 菜津子がナイフを取り出した。 「もういい!全部終わりにしてやる!」 菜津子が紐を切る。体重を紐に預けていて、残りの階段を体が真っ逆様に落ちていく。 菜津子が遮っていた光が私の目に直接入る。私は目を閉じた。
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