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言葉も出ない三成は放っておいて、俺は馬を降り、茶屋へと向かう。
慌て追い掛けてくる三成。
[奏]『さっさと説明しろよ。』
[三]『くッ!!段々、お前のどこが好きだったのか分からなくなって来たぞっ!?』
[奏]『じゃあ、その程度だったって事だろ?早めに気付けて良かったな?』
[三]『くッ!!このッ…[奏]『いいから説明ッ!!』
またも三成の言葉を遮る俺。
……駄目だなぁ。
ヘタに歴史なんか知ってるから馬鹿みたいに苛ついてばかりだ。
優しくしてやりたいんだけどなぁ……。
何に対してか分からない恐怖。
先の分からない不安。
油断すると、それがすぐに湧き出てくる。
……全く…それを三成にぶつけてどうするんだよ?
俺もまだまだガキだね。
茶屋の方から依頼内容の説明を終えて戻って来る三成が見えた。
俺は馬の傍で三成を待つ。
[奏]『三成ィ。俺さぁ、団子食ってみたい。』
[三]『……ッ…またお前はッ!!後にしろ。全部終わって一段落着いたら好きなだけ食わせてやる。』
[奏]『マジでっ!?』
[三]『「まじ」?』
[奏]『「本気」と書いて「マジ」と読む。』
[三]『そうか…では、マジだ。』
[奏]『よし、約束だぞ?』
三成は俺を見ながら軽く微笑んだ。
[三]『ああ、約束だ。』
[奏]『約束……したんだからな?死ぬなよ……?』
目を見開き、驚いた様に俺を見つめる三成。
俺は思わず、口を手で覆った。
ふいに口を突いた言葉。
それは瞬く間に俺の内へと広がって、大きな恐怖心へと姿を変える。
言葉にしちまって、初めて気が付いた。
………俺ってば
三成が死んじまう事を
畏れてたんだ
[奏]『アホくせぇ……。』
俺はポツリとそう呟いた。
ハハッ……
バカじゃねぇの?
……俺は…三成がいつ死んじゃうか分からなくなったのが怖くて不安だから、理不尽な八つ当たりしてたわけ?
俺は、自嘲気味に笑った。
俺ってば、ほんッと馬鹿。
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