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[三]『……奏旅?俺はもうすぐ死ぬのか…?』 驚いた顔の三成を見ながら、俺自身もかなり驚いていた。 [奏]『……あ~…いや、多分…まだ全然。』 [三]『ならば何故、今それを言うのだ?』 三成に問われ、軽く微笑んで見せる俺。 しかし、その笑顔は自分でも分かる程に情けないモノだった。 ……俺、動揺隠せてないよね? カッコ悪ぃなぁ。 俺は下を向き、静かに口を開く。 [奏]『……「怖かったから」…って言ったら笑うか?』 [三]『笑う訳がなかろう。何に怯えている?』 三成の優しい声に、視界が揺らいだ。 膨れ上がる不安が涙となって零れてしまいそうで、俺は必死に言葉を吐き出す。 [奏]『……歴史は…既にズレているんだ。史実だと、三成は今22歳のはずだし、堤の完成は12日程掛かった筈だし、決壊するほど堤に水は貯まらなかったから、堤を壊すなんて事はなかった。信長死亡は6月入ってからだしな。』 [三]『それで、あれ程までに焦っていたのか?』 [奏]『……ん…まぁ…な。』 俺は三成にしがみ付く。 [奏]『俺の知らない事が起こる。それは覚悟していた。知らない事に挑んでいく。それも覚悟していた。覚悟…してたんだ。なのに「石田三成の想定外の死」には、なんの覚悟も出来ない。それどころか、恐怖心だけが膨らんできて……』 俺は、しがみ付いた三成の着物を強く握り締める。 [奏]『歴史は既に変わった。だから、お前がいつ死ぬかも分からなくなった。お前が…三成が、俺の傍から消える事が怖いんだ…だからッ……死なないでっ!!俺をッ……一人にしないでッ……!!』 ……何だ?コレ。 俺…こんなに女々しかったか? 何…言っちゃってんの?俺 何、縋っちゃってんの?俺 カッコ悪ィ事この上ねぇし。 ……アホか?俺。 理解出来ない自分の行動と感情に、俺はどうしたら良いのか分からなくなる。 取り敢えず三成を突き飛ばし、いつも通りに言葉を投げ捨てた。 [奏]『なんつってな。さて、サッサと次の補給地点へ行こうぜ?』  
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