男と猫

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僕はそこで、ある考えが浮かんだ。ある種の満足感があったとしても、人生は流れに抗しがたいものだということを。たとえば水が流れやすい方に流れる如く、決して流れ難い方へは流れないように。 そして、今日の買い物の品々を思ってみた。ピーマン?オニオン?ズッキーニ?バジルとセージ?--------? 果たして何が出来るんだ?僕は考え違いをしていたのか?何を作ろうとしていたんだ?僕は思い直し、最後の便箋の二枚を読んだ。 「私に好きな男性が現れたと言うことは、必然だったのです。あなたと違って男らしいと言うわけではありませんが、私にとって未知な存在だったのです。私とは異質だったのです。あなたの奇怪な行動は私は理解しようとしませんが、私にとって認められる行動なのです。要は、決定的な要因は、もう元には戻れないと言うことです。私があなたの秘密を知った前からその発端は始まっていました。ひとつ、あなたに質問します。あなたは私のすべてを必要としていましたか?この答えはいつでもいいです。機会があったら教えて下さい。私は今、とても幸せな生活を送っています。どうぞ、あなたも幸せな人生を歩んでください。」 僕は手紙を読みきり、丁寧に折りたたんで男に返した。深夜、起き出して、猫にチョコレートをやる?僕はその問いを二、三度、頭に考え浮かべてみた。確かに奇異ではあるが、決していけないことではない。その男は額の汗を相変わらずハンカチで拭い、実直そうにそのハンカチを折りたたんでいた。そして、飲み物も飲みきったので僕らはコーヒーショップを出た。出口のところで僕は男と別れた。 僕は帰り足、また考えた。普通の夫婦の夫が深夜起きだし、公園に行って猫にチョコレートをやる?僕は何とも分かりきれぬ思いで家へ帰った。                         (了)
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