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「ハッハッハー、あれは正攻法じゃ打てないな~」
かなり急ピッチに肩を作りながら絵美が呟く。
(まさかもう一段“変わる”なんて予想もしていなかったな~。こりゃ、早め早めに動かないと)
これまでの野球の常識が通用しない相手。
絵美は危機感を募らせながらも喜んでいた。
『明らかに向こうが規格外と分かる中で、こちらの規格外っぷりも証明できる』
その為にはかなり危険な橋を渡らなければならない。
「こんなことなら、もっと早く準備していれば良かったな~」
今更後悔しても遅い。
試合前のプランでは自分は、早くても五回から登板のはずなのだから。
「さてと、こんなものかな~?」
本当ならもう一イニング投げ込みたかったが、試合前にかなり入念にアップしたから大丈夫だろう。
三球目も直球。
美子はこれも空振りで三球三振。
「……」
瀬名は真琴の投球を食い入るように見ていた。
球威、球速、ノビ。
どれも瀬名がこれまで対戦してきたサウスポーの限界を上回っている。
だからだろう。
瀬名が気にかかっているのは。
(頼もしい投球だけどそれだけだ。ペース配分もあったもんじゃない)
この投球はいつまでもつのか。
投手事情が決して充実しているとは言い難い中橋学園。
真琴には最低六回を投げきってもらいたいのだが、
「この試合、終盤戦が鍵だ」
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