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私立中橋学園高等学校。
10年前に女子校として開校され、3年前に共学となった、歴史の浅い私立高だ。
この学区では一番の偏差値を誇り、部活動よりも、学業に重点を置いた高校だ。
元々女子校だった名残から、生徒の男女比は2:8と大半が女子だ。
そんな中橋学園の入学式。一人の男子がやや緊張した面持ちで新しい日々に期待を寄せていた。
彼の名前は神谷瀬名。中学時代は、天才捕手と称えられた逸材だ。
運動経験者なだけあって、真新しい制服の上からでも、広い肩幅とがっちりとした脚がやや目立つ。
体育会系っぽくない、特徴が見当たらず、良くも悪くもない顔立ちだ。
そんな天才だが、この中橋学園に野球部はない。
そして、彼はそれを承知で――望んで入学したのだ。
(今日から、新しい生活が始まるんだ。頑張るぞ)
当然だが、全国の野球名門校から誘いがあった。
特待生制度の見直しが叫ばれている昨今であるが、北は北海道から、南は沖縄まで文字通り全国から誘いが絶えなかった。
が、彼はその全てを断り、野球部のない中橋学園に入学した。
その理由は、他人が聞けば呆れてしまう内容だった。
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