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神谷瀬名は、その実力とは正反対に、非常に気弱な性格の持ち主だった。
世間が思い描いていた完全無欠の天才。
それは、世間体が勝手に生み出した虚像であった。
そんな瀬名が、野球の才能を活かす道を閉ざした理由。
それは、
『だって、高校野球って、厳しいじゃないですか』
超ヘタレな考えから出た結論だった。
数ある運動部の中でも過酷で知られる野球部。
厳しい上下関係に始まり、早朝から夜までハードな練習。髪型は坊主を強制され、その姿は見る人が見れば、軍隊か塀の中だ。
そんな高校野球界が怖くて、瀬名は野球部のない中橋学園に逃げるように進学したのだ。
才能は、望んだ人に与えられるものではないのだ。
(高校に入ったら、野球から離れよう。野球は好きだけど、趣味で十分だ)
瀬名はそう心に誓っていた。
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