第1話『高校野球はやりたくない』

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藤村真琴は、野球をする為に来たと言っていたが、中橋学園に野球部はない。 ソフトボール部ならあるが、彼女は野球部と断言した。 同好会でも作るのだろうか? 一人で。 しかし、藤村真琴の行動は皆の予想を超えていた。 様々な運動部を見て回り、仮入部もすることなく見ているだけだった。 元々運動よりも、勉強を優先するような生徒が多い学校だ。特別強い運動部もない。 「なぁ、瀬名。どう思う?」 「? 何が?」 昼休み。 瀬名は同じ中学出身の唯一の男子、加藤に突然訪ねられ、訪ね返す。 「藤村だよ。藤村真琴」 「あぁ、可愛いとは思うよ。かなり、個性的だけど」 加えて野球がキーワードの藤村とは、あまりお近づきになりたくないのが本音だ。 「何かさ、上級生の所とかに行ってるんだってよ」 「へぇー」 興味がない。 が、気にならないかと言われると嘘になる。 そこで調べてみた。 中橋学園の校則によると、同好会及び部を作る為には、最低5人を集めなければならない。 その中で、専属顧問がいる団体が部。メンバーが集まっており、顧問が掛け持ちなのが同好会であり、部は学園から部費が支給されるが、同好会は原則として支給はされない。 つまり、藤村と同じように野球がやりたいと思っている生徒が彼女の他に四人いなければ部はおろか、同好会すら設立出来ないのだ。
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