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真琴自身にも何が起こっているのか理解できていない。
そもそも、テンションが限界を越えた時に投じるトルネードすら理解していないのだ。
ただ、今の感情の全てを白球に乗せて投じるだけ。
全力投球。
それが真琴の真骨頂。
後先のことなんか考えていられない。
今は、
「――全力で、ぶん投げる!!」
二球目。
投じたのは真ん中高めという甘めのコース。
普通に考えれば打ってくださいと言わんばかりの球だ。
打者が、打てれば。
女子野球の常識を覆す豪速球。
それが打てないと分かっていても、美子は振ってしまう。
スイングとほぼ同時にキャッチャーミットから轟音が響く。
美子にとっては屈辱だ。
まるで、『あなたは振り遅れている』と宣言されているようなものだ。
何故なら、ボールがストライクゾーンを通過してからバットを振っているからだ。
(球速が増していることを想定してスイングを早くしているのに――まだ遅い!?)
常識外の選手だとは聞いていた。知っていたが、
「規格外すぎる……」
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