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四回裏。
中橋学園の攻撃は三番のミチル――クリーンナップからだ。
そして、マウンドに上がるのは代打で登場しながらもスリーバント失敗で簡単にアウトになった絵美。
掴み所がなく、ハッキリ言ってどんな選手なのか分からない。
投球練習に目をやると、若干変則的なフォーム――スリークォーターとサイドスローの中間――であること以外に特徴はない。
特別速いということはなく、確かに変則的なフォームに多少戸惑うかもしれないが、
「これならさっきまでのサイドスローのサウスポーの方が打ちにくかったけど」
ミチルは戸惑いを隠せない。
それは瀬名も同じだった。
降板した圭織はスタミナ的にもまだ余裕があったように見えたし、雛と真琴以外には打たれていない。
正直な話、攻略法も見つけていないので追加点をどうやって奪うか頭を悩ませていた最中の降板だった。
(実は代打が本職? ――いや、打撃が得意なようには見えなかった)
となるとやはり投手が本職か。
でも、何故このタイミングで交代する必要があったのか。
それが瀬名には分からない。
(ハッハッハー、何故このタイミングで私が登場したか分からないって雰囲気だね~。それで良いのさ~)
絵美は満足していた。
これで狙いの半分は果たしたも同然。
彼――中橋学園は既に底無し沼に片足を突っ込んでいる。
もう片方を踏み入れさせれば、
「“この試合の流れはいただいた”のよね~」
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