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自分の出生に不満はない、むしろ自分は恵まれている、会社は父の兄が経営するちょっぴり有名な電気工事会社、あたしはそこに住み込みで働くいわゆるオフィスレディである。まぁ電話当番が出来ないという致命的な欠点はあるけどそのぶんちょっぴり得意なコンピューターで補っている…はず。
家を飛び出しはや一年。
夢とか希望とかある世の中、あたしは頑張ってます。
そんなこんなで今日も仕事終了のチャイムがなる。給湯室へと急ぎ人数分の湯飲みにお茶を入れてオフィスに戻り配る。これもあたしの大事なお仕事。配り終えて更衣室へ、こうしてあたし、中嶋 茶々の仕事は終了である。
更衣室を出る際にあらかじめ用意をしておく定型文の
━お疲れ様です。━
皆もお世話になったであろうこの厚紙の束。そう、小学生時代に九九を覚えるために使ったアレである。これには100枚のあたしの言の葉が詰まっている。
更衣室を出てすれ違う社員に見せる言の葉。
発する事の出来ないあたしの精一杯考えた会話方法。なお、定型文にない事はポケットに入れている猫の描かれたメモ帳で行うか携帯メモに打って見せる事で会話する、まぁ欠点も多数あるけど大体はこれでOKである。
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