闘病生活

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杏子は僕に泣き言や弱音を一つも言わなかった。 杏子は普段は甘えん坊さんでも、やっぱりしっかりしている。 改めて杏子の事を好きになった。 次の日、僕の病室に大阪から友達が来てくれた。 友達は僕を見て 「ナースのケツばっかり追い掛けるなよ。オレもお前の隣に入るわ」 と言う。 さすが我が親友。 言う事が違う。 気を使う事が無い。 それが逆に心地良かった。 友達は出張の通り道だったので寄ってくれたみたいだ。 改めて絆を深めた感じがした。 杏子は僕の所へ来て 「和哉はいい友達がいるんだね」 と言ってくれた。 僕は自慢げに 「でしょ?」 と答えた。 勤務が終わった杏子は僕の病室にやってきた。 さすがに勤務時間外なので室内に入る事は出来なかったが、ガラス越しに電話で話した。 杏子は 「治ったら何したい?」 と聞いてくる。 僕は少し考えて 「治ったらもう一度杏子と付き合いたい」 と答えた。 杏子は少し驚いた様子で 「うん!待ってるから、頑張って治そう」 と言ってくれた。 僕は杏子の顔を見ながら、ガラスに手を置くと、 杏子も僕の手に重ねるように置いた。 温もりは感じなかったが、僕はその事が嬉しくてたまらなかった。
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