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校門から出るとドッと疲れが溢れ出た。
「う~ん、とっ」
腕を上に伸ばし教室の狭苦しさを発散。
慣れた、とは言っても学校というエリアの窮屈さに変わりはない。中学時代の方は幾分か伸び伸びできたなと今更になって思えてきた。
高校にもなれば授業の濃さも段違いで遊ぶ時間も少なくなった。進学校だから余計に。私立の偏差値が低い高校に行った中学時代の友人の話を聞けば羨ましく思う。
「明後日か~」
ユリが唐突に呟く。一言も喋っていないから何のことだかさっぱりだ。
「春休みだよ。と言っても補習があるから休みって感じがしないかもだけど」
春休みのことか。いきなり言うもんだから分からなかったぜ。
補習。んなもん普通だったらバックレるところなのだが、生憎ユリなんていうお節介のお陰で欠席なく出席しているのだ。長期休暇くらい楽にさせてほしいのだが。
「一緒の大学に行くって決めたじゃない。まさか今更裏切る気じゃないでしょうね」
目端を釣り上げ顔を覗き込まれる。整った目鼻立ち、良い匂い、恐くもないのに恐い顔をするその合わなさによる可愛さ。それら全てが一気に押し寄せ俺のメーターが急上昇を……。
「──ねぇ、聞いてる?」
「あ、お、おうっ、聞いてる聞いてる。ちゃんと一緒の大学だ。そのために俺は成績を維持する」
見惚れていたことを誤魔化すべく慌てて話を合わせたが不自然すぎたか?
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