ファースト・コンタクト

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狭い教室に生徒が立ち上がる音が鳴り響く。 「気をつけ、礼!」 きっちりかっちりとした挨拶を真面目委員長がハキハキと発すればこの教室に掛けられた束縛の鎖は解かれる。 何をそんなに急ぐ必要があるのか運動部の暑苦しい奴等は我先にと出入り口を駆け抜けていき急ぐわけではないが遅く行くわけではない他の生徒はそんな暑苦しく騒がしい連中に罵声を浴びせるのだ。 この光景も慣れて久しい。入学当初は知り合いが少なく、もし以前からの友人に相談すれば俺らしくないと馬鹿にされること必至なのだが少しばかり不安だったかもしれない。 しかし今となってはクラスに一応馴染み込んでおり仲の良い友人もできた。ま、余程近寄るなオーラを発してさえいなければ友人は大体できるもんだ。ただ、クラスの三分の一は勉強命! な人間だから、あまり馬が合わないけども。 けど。俺が今楽しく学校生活を楽しめているのは新しい友人だけが理由ではない。昔から一緒にいるそいつこそ入学当初から俺と話す人間。 「私達も帰ろっ」 椅子に持たれてボケ~っと教室を眺めていた俺に話しかける声。入学前から知っている人間の中で、唯一親しい人物。それが── 「そうだなユリ、さっさと帰るか」 それが、ユリ。俺の幼馴染みだった。
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