一人と一匹暮らし

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    「ばっかみたい」       え? あぁ、鈴村さんのことね。 すっかり自分の思考に閉じ籠っていたあたしは、まやちゃんがぽつりとつぶやいた一言の意味が一瞬わからなかった。       「三年よ?三年も付き合っておいて、今更…今更、奥さんをこれ以上裏切ることは出来ないだなんて」       まやちゃんは静かに泣いていた。 表情も変えず、声を荒げることもなく。 ただ、静かに。       「違う。馬鹿なのは私ね。最初からわかっていたことじゃない。あの人は奥さんと別れることはない。そんな度胸もないって」       ねぇ、まやちゃん。 泣かないで? 男なんていなくてもいいじゃない。       「本当、馬鹿、みたい…」       ただ静かに泣いて、たまにぽつりと呟いて。 まやちゃんはそのままメイクも落とさずに眠ってしまった。 そんなまやちゃんにあたしは何も伝えられず、ただ寄り添うだけ。 どうしてあたしは猫なのかしら。   まやちゃんの頬をつたう涙を舌ですくって“にゃー”と鳴く。   泣かないで。 あたし達の生活に男もオスもいらないじゃない。 あたし達二人、ううん、一人と一匹で暮らしていきましょう。 ね、まやちゃん。    
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