追跡!初めての理解者

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「お疲れ様でした」 「おう!またな、雲平」 実験用具を片付け終え、雲平は鞄を手に理科室を出る。 その際、例の先輩からの言葉が返ってきた。 雲平はマスクを口の位置に戻し、よたよたふらふらと階段を降りていく。 階段を降りて、下駄箱で靴に履き替え、魔法科の校舎を出て、校門をくぐる。 相変わらずの足取りで、棒のように長くて細い脚を交互に進ませる。 「……」 空は茜色から、もう半ば薄暗い。人気もなく、いるとすれば猫か犬か自分ぐらいといった道で、雲平は唐突に足を止めた。 そうして、長っ細い体を振り向かせる。 「あの、何か用ですか?」 物陰がビクリと揺れる。 雲平が呼び掛けてからじっと見つめる事三十秒。 ようやく、物陰に隠れていた『影』が二つ姿を表した。 「やっぱり気付いてた?」 頭を掻きながら、失敗失敗といいたげに苦笑するのは優。 「うーん、僕たちもまだまだだね」 同じく苦笑しつつ、次にはもっと上手くやろうと考えるのは葉だった。 「ゴホッ…今日、教室からずっとついてきてたよね?」 「「うん」」 隠す様子もなく、悪びれた様子もなく、双子は頷く。 「……何で?」 「何でって……うーん」 ストレートに雲平に質問されて、優は思わず唇をへの字に曲げる。 「興味がでたから?」 「興味?」 今度は雲平首を傾げる。 「もしかして、雲平くんが僕たちを見分けられるんじゃないかな~って」 にこにこしながら葉は答える。 雲平は『あぁ』と言いながら、しばらく壊れたように停止した。
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