追跡!初めての理解者

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双子が心配になるぐらい無言で停止していたかと思うと、雲平は双子に背を向けて歩き出す。 「勘違いです。 ボクはあなた達は見分けられません」 「うそつくな。うそを」 棒読みの雲平の言葉を、優は否定する。そうして言葉は葉に変わった。 「雲平くんは僕たちを見分けられるよね? 今日も、僕たちを『全然違う』って言ってたし」 「気のせいですよ」 雲平は構わずすたすたと歩いていく。その態度に、優は少し頭にきてその腕を強引に引っ張った。 「ちょっと待てよ!」 ぐらりとバランスを崩す雲平だが、何とか踏ん張る。 「……離して」 「――!!」 鬱陶しい前髪が揺れるなか、ちらりと見えた雲平の瞳に思わず優は後退った。 その瞳には確かな、拒絶。 雲平はイライラしていた。 何がと言われれば、目の前の双子に原因があるようで――その実、この双子に対してではない。 別にこの双子だから、雲平は邪険に扱うわけでも、イライラしているわけでもない。 ただ、双子の瞳だ。 自分達を見分けられる。そう言いながら、向けてくるその瞳が、無性なほどに雲平を苛立たせていた。 キラキラ光る、熱望の眼差し。 そんな――――『期待』の瞳。
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