追跡!初めての理解者

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目の前の双子の瞳は『期待』している。『何に』期待しているかは知らないが、確かに『期待』していた。 「放っておいてくれよ……」 関わりたくない。 中心は嫌だ。端でいい。 いつも後ろから眺めて、適当に流して、流されていればいい。 そうすれば、自分は『期待』も『失望』もされない。 雲平はただ『大切なモノ』になりたくなかった。 『その他大勢』でいたいだけだった。 「嫌だ!」 「……ゴホッ…は?」 しかしそれは無理な話しだ。 普通の人ならば、こうも拒絶されれば諦める。 『代わり』を探すために引き下がる。 「…いま何て?」 「「嫌だ!!」」 双子は声を揃える。 双子には無理だ。 雲平に代わるモノなんて双子は知らないし、いない。 双子の瞳は確かに雲平に『期待』している。 なんてったって、初めてだからだ。自分達を『紀原』という区別ではなく、『葉』という、『優』という、個として区別されたのは。 双子は『期待』していた。 誰も彼もが双子を別々に見られない。しかし、そんな二人をいつか誰かが見分けてくれるんじゃないかと。 友も、肉親すらも見分けられない自分達を、いつか誰かが一人の人間として見てくれるんじゃないかと。 『期待』した。 『誰』かも分からない。 実際にいるかも分からない。 ただ『期待』し続けて、ただ待ちわびていた。 そんな『期待』が目の前に現れて、それを見逃すなどとこの双子がするわけない。
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