追跡!初めての理解者

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「嫌だって、そんな勝手な――」 その時、突然の風。 風に煽られ草木が揺れる。 そしてそれに呼応するように、隣接するマンションからいくつもの植木鉢が落下した。 「危ない!」 双子の頭上に、真っ直ぐ落ちるそれ。雲平は思わず声をあげたが、逃げ切れない。 「ブック!」 雲平の手元に光が収束。 光はやがて形を成して、一冊の分厚い本になる。 その間にも落下は止まらない。 呪文(スペル)を唱えてる時間は無い。 「気ままな泡の群れ」    バブルズフリー すぐさま発動。 無詠唱魔法(スペルカット)によって最速に発動された魔法。 雲平の手に緑色の筒のようなモノが握られ、雲平は筒をくわえると吹く。 途端、くわえているのとは逆側の筒の先端から、透明な球体が生成される。 人の半身程に膨れ上がった球体が筒から離脱、双子の頭上に滑り込む。 その際、落下してきた植木鉢をその中に取り込んでしまった。 フワフワと中に植木鉢を取り込んだ球体は浮いているが、徐々にその高度は下がっていく。 「早く離れて!」 雲平の言葉に従い、葉と優はすぐさまその場から離れる。 途端、球体は静かに割れて、中の植木鉢は地面に衝突し音をたてて割れた。 「ふぅ……」 安堵の息をつきながら、雲平は手元の本を消した。
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