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喧騒に包まれる教室。
そんなことを耳障りだと思うことは……なくもない。
「ゴホッゴホッ……」
教室の端。窓際から外を眺める長身の男子生徒。
風邪の時につけるマスクは彼にとってトレードマークのような必需品だ。
病的な体型に似合うマスク。
身長が高いその姿は風を正面から受けただけでポキリと折れてしまいそう。
キーンコーンカーンコーン……
始業のチャイム。
喧騒の教室内は担任が来るまで治まる気配は無いが、マスクの生徒は律儀に窓際から廊下側の自分の席に向かう。
その時、血の通りが悪かったのか、一瞬眩んで体勢が崩れた。
「いたっ!?」
「あ……」
その際に、友達と話していたらしいクラスメートの足を踏んづけてしまった。
「ゴホッ…ごめん。優君」
長身の体を小さく曲げて謝ると、マスクの生徒はよろよろするすると席に戻っていった。
何気ない気を利かせたこの一言が、静かな学校生活を望む彼の生活を激変させてしまう事をまだ彼は知る由もない。
彼に興味をもったある『双子』によって。
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