接し方がわからない!

5/10
前へ
/63ページ
次へ
――…1日の授業の終わりを告げる鐘が鳴る。担任が出て行くと、鷹も鞄を手に取る。 ふと、隣りを見ると鞄を手に宿木は待っている。 「行くか」 「……うん」 会話はこれだけ。 通常の生徒はこのまま帰宅だが、鷹と宿木はとても多忙なある委員に所属している為帰らない。 会話らしい会話もせず、廊下を進み辿り着いた部屋は『風紀室』。 鷹はいつものように、ノックもせずに扉をスライドさせる。 「やっほ~、鷹♪」 開くとすぐ、そんな子供っぽい声をかけてくるのは、外見も精神も行動すらもまんま子供な男の子。 クッキーをモグモグほおばりながら、部屋の中で一番偉い者が座る椅子に足をパタパタさせるのは、その通り風紀委員長である彼――セシル=ラザフォードである。 2年生でありながら学年一の魔法の実力を持つ彼は、学年一権力を持つ風紀委員の長である。 入って正面にいるセシルからやや右に視線をずらすと、ガラス張りのテーブルを挟んだソファーに足を組んで本を読んでいる青年が見える。 芸術品のように整えられた綺麗な顔に眼鏡を掛けた青年――石神 京夜()は、セシルと同じく2年でありながら風紀委員副委員長を務める無口な男だ。 「また菓子食ってんのか?セシル」 「食べる~?」 「いらん」 セシルの勧めを適当に断りながら、鷹は京夜の座るソファーとは違う、適当な椅子に腰をおろす。 宿木は風紀室の扉を丁寧に閉めながら、一度だけ鷹を見て、おずおずと京夜の正面に位置するソファーに座る。 鷹は内心ため息をつく。 いつもならうるさいと感じるセシルのはちゃめちゃも、こんな時はありがたい。 風紀室の仕事に振り回されていれば、その間は宿木と関わらなくてすむ。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

148人が本棚に入れています
本棚に追加