接し方がわからない!

6/10
前へ
/63ページ
次へ
「お疲れ様でした……」 「おつかれ~、宿木くん♪」 扉を極力静かに閉めると、宿木は帰っていった。 「ぶは~~」 途端に、ソファーに沈み込むように体を預けて息を吐き出す鷹。 「かわいそうだよ?宿木くん」 鷹の悩みを承知していながら、セシルは相変わらずお菓子を片手にニコニコしている。 「阿呆……」 「うるせえ、石神」 ぼそりと言い捨てた京夜に、鷹は疲れたように言い返す。 言い返してはいても、気に入らずとも2人の言葉は正しいと鷹はわかっている。 それでも悩んでるのだ。 「わかってんだよ…。 けどさぁ、どうしたらいいんだよ?」 鷹の言葉に2人は答えない。 答えを知っているかもしれないが、この2人は言わないだろう。 何故なら、鷹の悩みに対して2人が興味を持つのは、面白いかどうかだけだから。 悩んでる鷹を見るのも、困っている鷹を見るのも、2人……主にセシルの小悪魔に関してはそれに尽きる。 それを承知しているから、鷹も2人に答えを求めないし期待していない。 「はぁ~、じゃあな」 そうして鷹も風紀室を出ていく。 「いいのか?」 京夜は相変わらず小説に目を落としながら、部屋に残る少年に尋ねる。 「うーん、悩んで困ってる鷹っていうのも面白いんだけどね~」 悪趣味としかいえない。 セシルは机の引き出しに眠る書類…ではなく、詰まった新たなお菓子を取り出す。 包みをあけると、無垢な子供の顔で笑い菓子をほおばる。 「ん~、おいしい!」 「……おい」 話しがなかなか進まないセシルに京夜は急かす。 セシルはゴクンと口の中の菓子を飲み込むと、さっきまでと違う、無垢と妖しさの混じった子供には出来ない笑みを浮かべる。 「少し、飽きてきたよね♪」 悪魔の笑みに、京夜は他人事ながら同情の為のため息をついた。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

148人が本棚に入れています
本棚に追加