接し方がわからない!

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「どうしよう……」 悩んでいた。この人物が現在いるのは屋上。 校舎が大きいので、自然屋上の敷地も広い。そしてそんな所に鑑賞用植物を置いて、1つの憩いの場と化したそこ。 そんな屋上のベンチに、少年…いや少女――烏丸 宿木は座っていた。 何故屋上にいるか。 それはそのまま、宿木のいまの状況と悩みに直結する。 「鷹君……何の用だろう」 宿木は鷹に呼び出されていた。 そして『何の用』と言っても『あの件』しかありえない。 最近のやり取りだ。 宿木は何故自分が鷹に避けられているかわからない。わからないから、勘違いしている。 自分の軟弱さに鷹が嫌気をさしてしまったのではないか、と。 本気でそう思っている。 以前、宿木はそういう性格からいじめにあっていた。 あの頃より幾分マシになったとはいえ、宿木は自分に自信なんてもてない。 だから考える。可能性を。 鷹に、大切な人に見切りをつけられたのではないかと。 そしていま、こうして呼び出されたのは鷹に直接そう言われるのではないかと。 「……嫌だ」 嫌だ。逃げてしまおうか。 そう考えた。しかしそんな事をしても無意味なうえに、結果は変わらない。 どうする? どうしようもない。 甘んじて鷹の言葉を受ける。 だが面と向かって、その類の事を言われたら、 たえられるか? たえられない。 これは言い切れる。 宿木にとって、いま一番大切で信頼を寄せている人間は鷹だ。 そんな人に『嫌いだ』と言われたら、自分の性格的にたえられない。 ぐるぐると嫌な問いが湧き上がり、いつしか確定的な事に変わってしまった。 そんな時、屋上の扉が開かれた。
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