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――…鐘が鳴る。
校内に響き、校庭に響き、果ては近隣の建物に達する鐘が鳴る。
生徒は自分の鞄を手に取り友達との談笑に暮れながら教室を出ていく。
「……ゴホッ…」
雲平は鈍重ながら機械調に手を動かす。今日の教科書やノートを、自身の鞄に几帳面に並べ収納する。
そうしてやっと、クラスメートの人数が数人になった頃に席から動く。
ふらふらと覚束ない足取りで歩き、身を少し屈めて扉をくぐる。
「行こう」
「うん」
その動きをイライラしながら見ていたこの二人も、目当てが出ていったの視認してあとを追う。
教室から廊下を突っ切り、二階である所から更に三つ上がる。
そうしてすぐ目の前にあるのは『理科室』とプレートがうたれた教室なのだが。
「はぁ…はぁ…ゴホッゴホッ」
階を二つ上がった所で、雲平は膝に手をついて息切れしていた。
息を整えること五分。
雲平は意を決したように改めて階段をのぼり始める。
そうしてやっと目的の階に辿り着き、目的の教室に辿り着いたところで……。
「はぁ…はぁ…」
またも息を切らしていた。
それまでに痺れを切らした優が何度蹴りをいれにいこうとし、葉がそれを押さえたかは定かではない。
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