追跡!初めての理解者

8/15

148人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
「おー、雲平くん。来たか」 「ども」 雲平が理科室の扉をくぐるとその下――実際には平均的な身長なのだが自分にとっては下にあたる――から声をかけてくる男子生徒。 「ゴホッ…先輩、何してるんですか?」 雲平は白衣を着た三年の生徒が、何やら一生懸命していることに目がいく。 「これか?」 草やら木の枝が散乱する机と一緒にされているビーカー、何やらグツグツと煮たっている青い液体を先輩は持ち上げた。 「聞いて驚け! あらゆる種の薬草を織り交ぜ、先日完成した草木の成長を促進させる魔法粉を混合させた結果…… なんと人の身長が伸びる(予定)の薬が完成した!」 先輩はうっとりした目でビーカーの中で煮たつ青い液体を見ている。 「さあ、飲め雲平!」 グイッと、先輩はビーカーを雲平の顔に近付ける。 「先輩……」 雲平は慌てる様子もなく答える。 「自分、もうこれ以上背は伸びたくないので遠慮します」 先輩はしばらく停止してから『…そうか』と呟いて、別の部員に薦めにいった。 あの人物のいつもながら奇天烈な発明品は雲平も承知済み。 そしてその発明品は毎度上手くいかないのも承知済み。 一年である雲平が分かっているのだから、当然他の部員も承知している。 そして、あの先輩がとても良い人で、憎めないのも承知済みだ。 まぁ、実験台になるのはごめんだけど 別の一年が無理矢理例の液体を飲まされて泡を吹いてるのを見つつ、雲平は鞄を適当な棚に置いた。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

148人が本棚に入れています
本棚に追加