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白衣に着替えた雲平は理科室の窓から空を見上げる。
ベランダの壁に腰かけながら、流れる雲を見上げている。
その視界にふわりふわりと、透明な球体が漂う。
風に身を任せ漂うが、気紛れに割れて消えてしまう。
「……」
雲平はくわえている筒の先を手元の容器に浸し、再び浸したのとは逆側をくわえて息を吐く。
数十個の泡が先から噴出されてまた空気の海を泳ぐ。
「……」
わずかにオレンジがかった空をバックに、泡の球体は漂っては割れ、漂っては割れる。
気ままに空を泳ぎ、疲れると割れる。気が向けば下へ、気が向けば上へ。
「……ゴホッ」
何をするでもなく、雲平はそれを見ていた。泡が消えればまた作って、それを再び眺める。
自由に思える泡が、気ままに思える泡が、雲平はたまらなく好きだから。
「なにしてんだ?アイツ」
理科室の扉を少しだけあけて覗き込む優。
「さあ」
葉もだ。
雲平が化学部なのは聞いていたのだから分かる。
なのに雲平は一向に部活動をする気配はない。
白衣を着てベランダにいくと、その場で座り込みシャボン玉を飛ばしている。
何もしない。
ただボーっと、シャボン玉を吹いては空を見上げ。シャボン玉が全て割れると新たなシャボン玉を作ってまた空を見上げる。
他の部員も各々好き勝手に実験らしきことをしているが、雲平はその輪にいない。
だからといって、いじめられてるわけでもなさそうだ。
入ってきて早々話しかけていた先輩も、他の部員達も別に雲平を外してるようには思えない。
ただ、どちらかといえば、雲平自身が輪から外れて、みんなの一歩後ろにいる……そんな印象を双子は感じた。
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