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この時私は、すでに野木に対する怒りの感情は消えていた。
私が声を殺して笑っているのを、野木はうっとりと眺めている。
私を、自分の愛猫を見るような目で――……
「やっぱり、リリーだ…」
「髪の色が?」
「それだけじゃない。行動や仕草、全てだよ」
「何それ…。ハハ、まるで口説かれてるみたいじゃん、私」
「…そうだけど?」
「…………は?」
笑顔から一転、曇り顔になる私。
これは作った顔じゃない、自然になった顔だ。
野木を見ると、こいつも笑顔ではなく、真剣な表情をしていた。
「…ごめん。俺、果穂に一目惚れしちゃってさ」
「………………」
フリーズしそうな頭を、必死で動かす。
一目惚れ?こいつが、私に?
ボサボサ頭でジャージで素っぴんで……
かなり無愛想だった、あの私に?
「…ありえない」
あの時の私に、他人が一目惚れする要素なんてない。
ないはずなのに……
「ありえるよ!そして、今日の果穂を見て余計にその……好き、になった」
少し俯いて、恥ずかしそうにする野木。
……ヤバイ、少しキュンときてしまった。
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