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ドンドンドンドン!!!
今、私は『野木』と表札のかかったドアをノックしている。
中から、何やら「やめろー!」などと聞こえてくるが、構いはしない。
少し経って、やっとお目当ての人物が姿を現した。
「遅い」
「わりぃ!!でもさ、いい加減足でノックすんのやめてくれよ。部屋壊れんだろ!」
文句を言いながらでも、顔は笑顔な野木悠太。
Mかコイツは。気持ち悪っ。
と、最初はそう思ったが、今となってはもう日常茶飯事なわけで……慣れた。
たいして意味のない鍵をかけて、私たちはアパートを後にする。
「しっかし驚いたよ。まさかあんたが車買うなんてさ。貧乏人のくせして」
「貧乏なのはお互い様だろー?一目惚れしてさ、マジいい車なんだって!」
「…どうせ中古でしょ」
「どうせなんて言うなよー。立派なエコだぜ?」
歩いて数分の駐車場につく。
「これだよ、これ!」と嬉しそうにはしゃぐ野木についていく私。
隅に、小さな茶色の車が、ちんまりと鎮座していた。
「……ダサっ」
「ええ?!こんなに可愛いのに!!」
なんでまた、色が茶色なんだ。
……まぁ理由はわかっているけど。
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