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「果穂カラーだぞ?名前は『ザ・果穂号』」
「ウザいダサい野木キモい」
「え、俺?!」
野木はあれから、リリーの事を口にしなくなった。
この車だって、以前のこいつならきっと、『リリー色』だと言うだろう。
「…いつまでつっ立ってんの。乗せてくれるんじゃないの?」
「お?…おお!そうそう!どうぞ果穂様」
「はいはい」
助手席にドカッと座る私を見て、野木はニヤリと笑う。
「……何」
「ん?いやー、なんか果穂が可愛くてさ♪」
「はぁ?何いってんだか」
ニヤニヤし続ける野木を適当にあしらいつつも、つられてにやけそうになっている私がいる。
……ああ、悔しい。
悔しいけど、楽しい。
「それでは出発~!」
私たちに似合うおんぼろ車は、ゆっくりと発車した。
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