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あの日以来、良牙と連絡がとれなくなった。
携帯は繋がらず、家の電話は留守電にもならずに呼び出し音がなるだけ。
麻衣はいろんな理由を考えた。
『携帯壊しちゃったのかな…』
『就活忙しくて、私をかまえなくなっちゃったかな…』
『新しい彼女が出来たのかな…』
『気が変わっちゃったかな…』
どんな理由を考えても、あの電話の後会えなかった理由としては納得出来ないものだった。
麻衣の部屋には、良牙の着替えやタオル類があって、いつ来ても良いように綺麗にたたんである。
昨日は落ち込み…
今日は空元気…
明日は…
日にちばかりが過ぎてゆく…
一週間音信不通が続いたある日、麻衣の携帯電話に見覚えのない着信履歴が残っていた。
麻衣は慌ててかけ直す。
『りょーちゃんだっ‼絶対そうだっ‼やっぱり携帯壊しちゃったんだなぁ~』
着信履歴を表示し通話ボタンを押す手が震える…
プルルルル…プルルルル…
プルルルル…プルルルル…
『はぃ』
電話口に出たのは女性だった。
麻衣はすっかり良牙だと思い込んでいたので、落胆した。
『…あっ…えっとー…私の携帯に着信履歴が残っていたので…』
そう麻衣が言うと、電話口の女性が驚いた様な声で言う。
『あなたっ‼及川麻衣さんね⁉』
女性は麻衣が言葉を挟む間もなく続けた。
『聖良牙の母です。』
あまりにも突然で、麻衣は絶句した。
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