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必死に叫んだ
目の前に現れた化け物に足がすくんで一歩も動けずにいた当時の俺には叫ぶことしか出来なかった
この叫びに驚いて何処かに行ってくれること思いながらひたすらに家族の名前を叫んでいた
化け物は俺の叫びに臆することも驚く様子も無かった、ただ一度だけちらりと目障りと言わんばかりにこちらを見ただけだった
それから、どのくらい叫んだか忘れ
化け物が消えた頃に見えたのは無惨な両親の姿だった
「あ……あぁ……ぁ……父さん、母さん……あ゛あ゛ぁあああ゛ああぁぁ!!!!」
当時八歳だった俺に耐えられるものではなく、心が壊れかけていた
「……ぅ…………うぅ」
「……蓮!?」
弟が生きていた
その事実に俺の壊れかけていた心が救われた
俺は残ったたった一人の家族に縋り付き泣いた
暖かかった、とても暖かかった
「……ゴメン、ね?僕……」
突然、謝られ意味がわからなかった
謝る方は俺なのに
「……なにいって」
弟に声を掛けようとした瞬間に弟は0と1に分裂し始めた
「れ、蓮?……蓮!!……あ゛あぁ、うあ゛あぁあ゛ぁあああぁ!!」
弟は自身の泣き顔と宝物を残してこの世から消滅した
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