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あれから一時間くらい経ってからピィが帰ってきた。
「おかえり。遅かったな」
「なかなか落ち着いてくれなくてさぁ。」
「そっか。見してみ」
ピィはダウンジャケットから少し汚れた白い猫を取り出した。
猫は麻酔で眠っている。
「可愛いな~」
「“かず”っていうみたいだよ。
首のプレートに書いてる」
「…お前捨てられたん?
可哀相にな。もう大丈夫やで」
「亮ちゃん…この子飼える?」
…飼うのは正直難しい。
この研究所には色んな動物が居すぎて飼えへんし、家には寝るためだけにしかほとんど帰らんから、家でも飼えへん。
「俺は飼えへんな…」
「俺も無理…。家に犬2匹もいるし」
「…まぁ、誰が飼うかは後でええやん。
とりあえず今は、体冷えてるし、温めてあげなアカンで」
「うん。お湯持ってくる!」
パタパタと走っていくピィに、
「タオルも!」と大きい声で呼び掛けて猫を抱き上げた。
「絶対に飼い主見つけたる。
人は怖い人ばっかり違うから…」
子猫の体には、よく見たら小さな痣<アザ>がいっぱいあった。
それは動物同士の喧嘩で出来るような引っ掻き傷じゃなくて、叩かれて出来たであろう痣。
小さな体で堪えてきたであろう、子猫を摩りながら小さく誓った
もう苦しませたりしない、と。
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