1*にゃんこ

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あれから一時間くらい経ってからピィが帰ってきた。 「おかえり。遅かったな」 「なかなか落ち着いてくれなくてさぁ。」 「そっか。見してみ」 ピィはダウンジャケットから少し汚れた白い猫を取り出した。 猫は麻酔で眠っている。 「可愛いな~」 「“かず”っていうみたいだよ。 首のプレートに書いてる」 「…お前捨てられたん? 可哀相にな。もう大丈夫やで」 「亮ちゃん…この子飼える?」 …飼うのは正直難しい。 この研究所には色んな動物が居すぎて飼えへんし、家には寝るためだけにしかほとんど帰らんから、家でも飼えへん。 「俺は飼えへんな…」 「俺も無理…。家に犬2匹もいるし」 「…まぁ、誰が飼うかは後でええやん。 とりあえず今は、体冷えてるし、温めてあげなアカンで」 「うん。お湯持ってくる!」 パタパタと走っていくピィに、 「タオルも!」と大きい声で呼び掛けて猫を抱き上げた。 「絶対に飼い主見つけたる。 人は怖い人ばっかり違うから…」 子猫の体には、よく見たら小さな痣<アザ>がいっぱいあった。 それは動物同士の喧嘩で出来るような引っ掻き傷じゃなくて、叩かれて出来たであろう痣。 小さな体で堪えてきたであろう、子猫を摩りながら小さく誓った もう苦しませたりしない、と。
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