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 ――八月の始め。もうとうに夏休みなのに、私は係の仕事をするため学校へ来ていた。  梅雨が過ぎれば、すぐに夏がやってくる。  暗雲が空を覆い尽くしていたの頃が嘘のように、雲一つない日が続いていた。  照りつける太陽のせいで、肌がじわじわとあぶられているのがわかる。 「真央(まお)!」  ふいに遠くから名前を呼ばれ、私は今している作業を中断して顔を上げた。 「遅い」 「ごめんごめん! マジごめん!」  ぶすっと呟く私に、走り寄ってきた水城鮎美(ミズキアユミ)は顔の前で両手を合わせた。……どうせそれほど悪いなんて思ってないくせに、真に迫った演技だけは上手い。  鮎美は私のクラスメイトで、仲のいい友達だった。その鮎美と、今日は学校で会う約束をしていたのだ。  理由は草むしり。私たちは栽培委員で、夏休みに一度、ぼうぼうに生えた校庭の花壇をきれいにしなくてはならない。  伸びきった雑草を抜き、如雨露(じょうろ)で水をあげるだけの簡単な仕事だけれど、炎天下の中では意外と重労働だ。  しかも今まで一人だったし。
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