それはある日の出来事

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「よ、よろしくて……」 と、差し延べた手は空しく玄関ドアに阻まれていた。 つまり、私は子猫を押し付けられたわけだ。 腕の中の子猫はといえば、さっさと私の服をよじ登る。 「ち、ちょっと!!痛いよっ!」 細くて尖った爪が肉にくいこんで痛い。けれど子猫はお構いなし。 肩に乗っていきなり唸っている。 「お、大家さんっ、大家さんっ!」 耳元で響く雷のような轟きに恐れをなした私は慌ててドアを叩く。
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