一章 出逢い

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「入隊決定でいいですよね、近藤さん?」 彼女の目線の先には、道場の入り口で試合の様子を見ていた近藤。 近藤は詩季の問いに答えず中へと入ると、小さく頷きを返す。 「ああ、先程約束したからね。」 そして一旦言葉を区切り、道場内の全隊士に聞こえるよう大きな声で次の言葉を紡いだ。 「今からこの壬生浪士組の仲間になる北神詩季君だ。剣の腕は君たちの目で見てもらった通りだ。それでは北神君、一言挨拶を。」 詩季に挨拶を促し、彼女は一つ頷いた。 「初めまして、北神詩季と申します。右も左もわからない不束者ですが、皆様どうぞ宜しくお願い致します。」 隊士たちを真っ直ぐ見て、彼女は深く頭を下げる。 その様子を沖田は一人無表情で見ていた。 彼の脳内に巡るは先程の入隊試合のこと。 (彼は入ったばかりの他の新入隊士よりも力がない。それに力の無さを速さで補う節もあった。まさか彼は…) 試合の様子を見ていただけでは判らなかったが、戦ったからこそ分かる。 詩季の腕力は男にしては弱い。 彼女が男ならばもっと力強く、受けた剣も重く感じるはず。 だが沖田が感じた剣は重さよりも速さを重視する剣。 それが意味するところは、詩季が女であるという事実のみ。 (近藤さんたちは北神さんの性別に気付いていないのか?いや、それはあり得ない。近藤さんだけならともかく、土方さんが気付かないはずがない。ということはこれを知っているのは二人だけということになる。でも何で私に教えてくれないんだろう…。) 近藤を慕って上洛してきた沖田にとって、自分だけ仲間外れというのは納得がいかない。 その膨れっ面を見てくすりと近藤は笑う。 「総司、そんな顔をしてる暇があったら早く着替えてこい。着替え終わったら北神君と一緒に俺の部屋に来てくれ。」 近藤はそう言い終わると、解散するように指示を残し部屋を出て行った。 それに続き、ぞろぞろと隊士たちは道場を後にするのだった。 そして場所は変わり、局長室。 「近藤さん、私です。失礼します。」 襖越しに声を掛け、沖田と詩季の二人は中に入る。 「早かったな。とりあえず座ってくれ。」 そう言って近藤は二人に座るよう促す。 二人が座り終えると、彼は沖田に向かって口を開く。
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