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「さて、総司には説明しなければならないことがいくつかあるな。」
「ええ、私も聞きたいことがありますから。」
何の話をされるのだろうとでも言うように沖田は前のめりになる。
「一つ目、北神君は女性だ。」
「やっぱり。」
きらんと目を輝かせ、沖田は言葉を続ける。
「先程の試合で気付きました。剣が男ほど重くありませんでしたし、速さに特化していましたから。男の格好をしていても力だけは誤魔化せないですからね。」
得意げに言う沖田に、近藤は一つ息をつく。
「気付いていたのか、流石は総司だな。」
溜息混じりに笑う近藤に沖田は再び笑みを浮かべる。
「伊達に浪士組をやってませんよ。それにしても、何故近藤さんと土方さんは北神さんを入隊させたのですか?ここは女人禁制の筈ですよ。」
わからないというように眉を寄せ、沖田は問う。
その質問に答えたのは土方だった。
「それくらい俺にだってわかってる。けどな、戦力が足りねぇことくらいお前もわかってんだろ?総司や近藤さんたち程剣が強い奴の方が少ない。だが北神は女だが剣に関しては強い。」
「でも!」
彼の言葉を中断して沖田は叫ぶ。
「北神さんは女性です!隊内に女性がいるなど隊士の士気が下がります!」
そう叫ぶ沖田に詩季は静かに言葉を紡いだ。
「なら私が女だとばれなければ良い。それなら構いませんよね?」
「ですが他の隊士と雑魚寝というのを女性に強いるわけには…。」
あくまで反対する彼を詩季は押しとどめる。
「別に私は雑魚寝でも気にしませんよ、慣れてますし。」
淡々と話す彼女の口調はこれ以上の反論は許さないと言っているようで、沖田は静まる他なかった。
そして今まで黙っていた土方が口を開く。
「って訳だ。北神は“男”だ。女だとばれるんじゃねぇぞ。あと部屋の件なら当てがある。そいつに聞いてから伝える。良いな。」
こうして北神詩季の入隊が決まった。
運命の歯車は、少しずつ少しずつ、廻りはじめる。
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