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「剣の腕は確かと言われた貴方(アナタ)も、結局は此の程度ですか。…もう少し出来る方だと思っていたのに残念です。」
漆黒の闇が広がる深夜、場所は京の都にある三条川原。
そこに彼女は居た。
長い茶色の髪を一つに結っている少女は赤い雫が垂れる刀を持ち、静かに佇んでいた。
そんな彼女の前には血で染まった一人の男。
彼女の友人、松居嘉助である。
「昔は幕府を倒そうと一緒に頑張っていたじゃないですか。そんな貴方が幕府に情報を流していただなんて思いもしませんでしたよ。少しでも貴方に期待した私が馬鹿でした。」
そう溜息を尽いた後、少女は空を見上げた。
見上げる空には星が輝いている。
その星空に手を伸ばしながら、彼女は悲しそうに笑う。
「松陰先生、貴方は…、貴方の大切な門下生を殺した私を、お恨みになりますか?」
そして少女は血に伏した緋(アカ)と一粒の雫を携え、京の闇へと紛れていった。
それが、螺旋の運命の始まりだとも知らずに。
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