一章 出逢い

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「へぇ、此処が壬生浪士組の屯所か。」 朝、壬生浪士組の屯所である八木邸の前に一人の少年が立っていた。 近くに居る門番の男は冷やかしと思っているのか、気にも留めずに仕事をしている。 そんな男に彼は声を掛けた。 「すみません、入隊希望者ですが隊士の募集はしていらっしゃいますか?」 「お前みたいな子供は帰れ!此処は会津藩預かりの壬生浪士組だぞ!」 如何にも自分は名誉ある人間だ、とでも言うように彼は少年を手で追い払う仕草をした。 しかしそれにも関わらず、少年は男に告げる。 「私は北神詩季と申します。これでも一応十八なんですけどね。…まぁ、あんまり嘗めないで下さいよ、昼間に人は殺したくないので。」 そう言うと彼は腰に差した刀を抜き、それをすっと男の首元に突きつけた。 男を真っ直ぐに見詰める少年の目は冷たい色をしており感情を感じさせない。 「なっ…!」 門番は驚いて後ろに後退ろうとした。 しかし驚きよりも恐怖が勝っていたようで、彼はその場にへなへなと座り込む。 その様子を見、少年はつまらなそうに笑った。 「門番の癖に情けないですね。門番ならこれくらいのことに動じてはいけませんよ。昨日の門番役だった嘉助さんはきちんと応戦してくださったのに。」 「嘉助を殺したのはてめえか!」 詩季の一言を聞いた瞬間、男は先程の恐怖は何処へやら、怒りに顔を染めて立ち上がり刀を抜いた。 此処、壬生浪士組では昨日隊士が殺された。 その者の名は松居嘉助。 壬生浪士組の平隊士として、門番役を受け持っていた男である。 そんな彼は昨日“昔馴染みに会ってくる”と他の隊士に告げた後行方がわからなくなっていた。 その数刻後、松居は変わり果てた姿で見つかった。 刀を抜いた詩季と男が対峙する中、詩季は面白げに口角を上げた。 「ええ、嘉助さんを殺したのは私です。昔馴染みですし殺したくはなかったのですが、ちょっと人に頼まれたので仕方なく。」 くすりと笑う少年の態度に堪忍袋の緒が切れたのか、門番の男は詩季に斬り掛かろうとする。 しかし、それは叶わなかった。
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