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しばらくして彼女のお父さんから電話があり、
「子供はおろさなければ娘が死ぬかもしれない」と言われましたが、何がなにやら訳もわからず取りあえず病院にいくことにしました。
医者のいうことはよく解りませんでしたが、どうやら白血病らしく
「子供は生まれても死産、最悪母子ともに死んでしまう」
と言われ、狼狽しました。
結局、彼女の両親にも説得されておろすことになりました。
病院のベットに座る彼女の背中は今でも忘れられません。
それから二ヶ月後に彼女は子供のもとに行きました。
僕が病院に着いたときには既に彼女は二度と目を覚ましませんでした。
おろしたことにより彼女に肉体的にも精神的にも大きな負担になったのではないかと後悔しています。
あの時無理にでも子供を産んでいればひょっとして彼女は助かっていたかもしれません。
お葬式の出棺の時に彼女のお父さんは僕に向かって激怒し、
「おまえが娘を殺したんだ。ここからは付いてくるな」
と言われて酷くショックを受けましたが、あれがお父さんの僕にたいする精一杯の優しさただといまでは思っています。
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